
昼の動物園に男が佇む
灰色の背広に立派な鞄を抱えた男が
唯一つの柵を漠然と眺めている
意図もなく鈍い動きの眼球は時々ぴたりと動きを止める
その先には色の薄い瞳
活力の見えない横に長い瞳孔を持った瞳がある
力無い眼で男はただそれを眺めている
一つの柵の前に男が佇む
何も知らずに作られた愛妻弁当と必要性を失くした通勤定期を詰めた立派な鞄から
やがて一つの印刷物を取り出す
計画名を呟き
ただ溜息をついて
しまい込む
それを彼此一時間繰り返すと
男はまた力無い眼で横長の瞳孔を眺める
古くから多くの人の罪を背負い続けて来たこの生き物は
諦めのような
むしろ恨みのような
はたまた理不尽への拒絶のような
あるいは全てを受容した慈愛のような
複雑なものを抱えた横長の瞳孔で
周囲を見渡しただ緩慢に歩を進めるのみで
男は虚ろな笑みを浮かべて呟く
私もお前と同じ
贖罪の山羊《スケープゴート》